今回は、毛髪診断士として多くの方の悩みに向き合ってこられた、専門家の山本先生にお話を伺います。インタビュアー「先生、薄毛の相談で最も多いのは、やはり遺伝に関するお悩みでしょうか?」山本先生「はい、その通りです。『父も祖父も薄毛なので、自分も禿げるのは運命ですよね?』という、諦めにも似たご相談を非常に多く受けます。しかし、私はいつもこうお答えしています。『遺伝は、あくまで”薄毛のなりやすさ”という体質を受け継ぐものであり、禿げることが確定した運命ではありませんよ』と」。インタビュアー「”なりやすさ”ですか。具体的にはどういうことでしょう?」山本先生「AGA(男性型脱毛症)の主な原因は、男性ホルモンが5αリダクターゼという酵素と結びつき、脱毛を促すDHTに変化することです。この5αリダクターゼの活性度や、男性ホルモンに対する毛乳頭の感受性の高さが、遺伝によって受け継がれやすいのです。つまり、引き金となる要素を、他の人より多く持っている状態、と言えます。しかし、その引き金を引くかどうかは、その後の生活習慣や環境要因が大きく関わってきます」。インタビュアー「では、遺伝的なリスクがある人は、何を心掛けるべきでしょうか?」山本先生「何よりも『早期の気づきと対策』です。自分にはそのリスクがある、という自覚を持つことは、悲観することではなく、むしろアドバンテージになります。他の人が見過ごしてしまうような、抜け毛の質の変化や頭皮の硬さといった些細な前兆にも、敏感に気づくことができるからです。そして、そのサインを感じたら、すぐに生活習慣の見直し、例えばバランスの取れた食事や十分な睡眠、ストレスケアといった基本的な対策を始めるのです。遺伝というカードを持っているからこそ、他の人よりも早く、そして真剣に対策に取り組むことができる。運命だと諦めて何もしない人と、リスクを自覚して早くから手を打つ人とでは、10年後、20年後の結果は全く違ってきます。遺伝は、悲観するための材料ではなく、賢く立ち回るための、大切な情報源なのです」。
遺伝は運命じゃない!薄毛リスクとの向き合い方