「何歳からはげるのか」という問いに対して、明確な年齢を科学的に断定することはできません。しかし、これまでの研究から、薄毛、特に男性型脱毛症(AGA)の発症年齢や進行に関連するいくつかの科学的根拠が示されています。まず、AGAの発症には遺伝的要因が大きく関与していることが多くの研究で明らかにされています。具体的には、男性ホルモンレセプター遺伝子や、5αリダクターゼ遺伝子などが、AGAの発症リスクや進行のしやすさと関連していると報告されています。これらの遺伝子の組み合わせによって、AGAが発症しやすい体質かどうかが左右され、それが結果的に「はげ始める年齢」の個人差に繋がると考えられます。遺伝的素因が強い人は、10代後半や20代前半といった比較的若い年齢からAGAの症状が現れ始める可能性があります。次に、男性ホルモンの影響です。AGAは、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素によって、より強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、このDHTが毛乳頭細胞に作用することで引き起こされます。テストステロンの分泌は思春期以降に活発になるため、AGAも基本的には思春期以降に発症する可能性があります。年齢を重ねるとともに、DHTの影響が蓄積され、薄毛が進行していくと考えられます。また、人種によるAGAの発症率の違いも報告されています。一般的に、白色人種はアジア人種や黒色人種に比べてAGAの発症率が高いとされており、発症年齢も比較的若い傾向があると言われています。これは、遺伝的背景の違いが影響していると考えられます。さらに、疫学的な調査からは、年齢とともにAGAの発症率が上昇していくことが示されています。例えば、日本人男性を対象とした調査では、20代で約10%、30代で約20%、40代で約30%、50代以降では40%以上というように、年齢が上がるにつれて有病率が高くなることが報告されています。これらの研究結果から言えることは、「はげる」年齢は、遺伝的素因、ホルモン環境、人種、そして加齢といった複数の要因が複雑に絡み合って決まるということです。特定の年齢でスイッチが入るように始まるわけではなく、個々人の持つリスク因子と時間経過によって、その現れ方が異なると理解するのが適切でしょう。
— かつら —
「はげる」年齢に科学的根拠はある?研究から分かること
2024年10月28日