男性型脱毛症(AGA)の治療薬を服用している方が「もう薄毛は改善したから」と自己判断で中断してしまうと、残念ながら薄毛は再び進行する可能性が高いです。これは、AGAが進行性の脱毛症であり、治療薬がその進行を一時的に抑えている「対症療法」であるためです。薬の服用をやめると、その効果が時間とともに失われ、薄毛が治療開始前の状態へと逆戻りしてしまうメカニズムについて解説します。 AGAの主な原因は、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換されることにあります。このDHTが毛根の受容体に結合することで、ヘアサイクル(髪が生え変わる周期)が乱れ、髪の成長期が短縮されて細く短い毛が増え、最終的に抜け落ちてしまいます。フィナステリドやデュタステリドといったAGA治療薬は、この5αリダクターゼの働きを阻害し、DHTの生成を抑制することで抜け毛の進行を食い止めています。 しかし、薬の服用を中止すると、体内で抑制されていたDHTの生成が再び活発になります。 プロペシア(フィナステリド)に含まれる有効成分フィナステリドの効果は、服用後約24時間で完全になくなるため、服用を途中でやめると、その効果が失われてしまいます。 その結果、ヘアサイクルは再び乱れ始め、成長期が短縮されたり、毛母細胞の活動が低下したりすることで、抜け毛が増加し、薄毛が再進行してしまうのです。 多くの報告では、治療中断後およそ半年をかけて薄毛が元の状態に戻ってしまうとされています。 ミノキシジルの場合も同様で、その発毛効果の本質は成長期の期間を延長し、毛包の矮小化を改善することにあります。 しかし、治療を中断すると、ヘアサイクルに関わる効果が維持されず、再び成長期が短縮される可能性があります。 その結果、細く短い髪が増加し、頭皮が透けやすくなるなど、見た目の薄毛が目立つリスクが懸念されます。 AGAは根本的な治癒が難しい脱毛症であり、治療薬はあくまで進行を遅らせる効果があるため、治療を中断すると症状が再発、進行することになるのです。